131 「それぞれの場所」 6月29日

いつもアシスタントをお願いしていたEさんと渋谷で会う。
撮影で東京に来てたらしい。
ルノアールで彼女のブックを見せてもらったり、東京の感じを話してみたり。
大阪で仕事をしている彼女ではあるが、気持ちは少し東京に傾いている。

僕はすべてにおいて東京を絶賛するつもりはない。
例えば関西やそれ例外の地域にいる方が、満たされ、幸せにやっていけるケースも多々あると思う。
ただそれと同様に東京にいなければ、どうしようもないこともあるのは、また事実だ。

何を求めているのか。
何を幸せと思うのか。
その指標は誰かが定めるものではなく、自分の中にある。

僕は東京に来たいと思った。
でもそこを耕すのは自分が思っていた以上に、大変なことだと気が付いた(笑
まあ、それが分からなかったから、思いきって来れたというのもあるのだけれど。

ただ自分の中にあった閉塞感のようなものは、まったくなくなった。
不安になれるくらい何もなくなった(笑
ただもう一度、まっさらになってスタートできるのだ。

つまり「新鮮さ」と「不安さ」は常に背中合わせということなのだろう。

握手して渋谷の雑踏の中に彼女は消えていった。
大丈夫。
まだまだ時間はあるよ。








130 「品川ナンバー」 6月28日

車のナンバー変更に行く。
前回は書類の不備を指摘され、新しいナンバーを貰うことができなかったのだ。
で、今日また行った。
場所は品川の陸運局。
決して距離があるわけではないのだけれど、混んでるので一時間近くはかかってしまう。
が、また不備が発覚!。
できないと言うのだ。
もう、ほんと、お願いしますよぉ、もう2回も来てんだから、と泣きつく。
でも東京は親切な人が多い。
面倒な作業のはずなのに、機転を利かせて書類を通してくれたのだ。
ただ半日かかったけれど・・・。

まあ何はともあれニューナンバーになった。
3539。
リズムは悪くない。
サンキューサンキューじゃちょっと恥ずかしいし。
とりあえずひとつ仕事が減った。

来週、新しい仕事が入った。
F画報の広告タイアップ2ページだ。
喜んだものの、電話を切った後、ちょっぴり緊張。
人の写真を1ページで使うらしい。
初めての仕事をこんなカタチでくれるなんて、その編集の人もチャレンジャーだなぁ(笑
でもほんと、できると思ってくれてるわけですから、ありがたいです。

月末に帰阪します(というかすでに月末なんだけど・・・)
新幹線でと思っていたのだけれど、でもやっぱり機材はちゃんとしたいし、と言うわけで車で帰ろうと思っています。
でもまだ予定をまったくたてていない。
いつ帰るんだろう・・・。

ちなみに今日も走りました。
明日も走る予定です。
ではまた。







129 「ジョギング始める」 6月27日

今日からジョギングを始める。
緑道を環七まで走り、Uターンして近くの公園でストレッチ。
以前と違ってからだが重いので、足に負担がかかっているような気がする。
もう足首が痛いのだ。

そもそもジョギングを始める気持ちは昔からあった。
体力が落ちはじめる頃だし、撮影が続くと集中するのが辛くなってきた(もちろん仕事がシビアになってきたということもあるが)。
でも考え方を変えれば、体力があればもっと楽に撮影できるかも、
もしくは今まで以上に深く追求できるのではないか、という考えもある。
ただ大阪では時間もなかったし、走る場所もなかったので、東京に行くまで先延ばしにしていた。
それを実行したのだ。
ただ何度も言うが、足が痛い(笑

まだ完全にフィックスしたわけではないけれど、いくつか仕事が入ってきそうな気配。
そのひとつはほんとに体力勝負と言う感じで、持久力がなければ撮影にならない。
でも仕事としてはとても面白そうなものなので、本決まりになることを願っている。
詳しいことはまだ書けないので、この話はまたの機会に。

どうやら今月終わりに一度、帰阪できそうな気配。
帰ったついでに散髪行ったり、Tシャツ買いに行ったりするか(東京はでか過ぎて、どこに何があるか、よく分からない(泣)






128 「東京の友人たち」 6月23日

午前中、代々木公園でエディターの武田さんと待ち合わせ。
事務所でデータを開いて確認し、少し世間話。
「今度はもっと大きく扱える写真をお願いするようにしますから」と武田さん。
「ぜひお願いします」と笑いながら、手を振って別れる。
武田さんとは関西で何度か仕事をさせてもらった。
そのとき彼が言った言葉を僕はよく覚えている。

編集者やライターは「ここの写真、押さえててもらっていいですか」と時に言う。
普通に撮れる時もあれば、寄っても引いてもレンズを交換しても、決まらない被写体がたまにある。
ただ説明としては撮れるけど、でもプロである以上はいいものを残したい。
撮りたくないなぁ、と思っていてもたいていの場合、とりあえず押さえておいて下さいと言われ、不本意な写真を撮るハメになる。
でも武田さんは違った。
「絵にならなかったら、撮らなくてもいいですよ。プロがそう感じているのなら、きっとそうでしょうから。
いいと思えるものがあったら、そのときは撮って下さい」
そんなことを言う人がいるんだ、と思った。
それ以来、武田さんは僕の中の「いい人リスト」に属している。
また彼と仕事ができて良かった。

その後、天王洲アイルへ。
ナイキの森部氏と会う。
話はほとんど仕事と関係のないことばかり。
でも相変わらず面白かったけど。
まわりはデザイン画を広げたり、いろんな仕事の打ち合わせをしていて、何か動いてんなー、という雰囲気が伝わって来る。
それなのに僕らのテーブルだけ、「うそやん、ほんまかいなぁ!」と思いっきり、関西弁(笑

帰りにナイキショップへ連れて行ってもらい、パンツと靴を購入。
握手をして別れる。

新橋に寄ってリクルートの鈴木さんと会う。
彼女とは本当にたくさん仕事をした。
彼女が上海から日本に帰ってくる時、大阪ではなく東京に配属になった。
それも4月の終わりという、ほぼ僕が上京するのと変わらない時期だ。
本当に縁があるなぁと思う。
スターバックスでコーヒー片手に、お互いの近況や将来のビジョンを話す。

友人と知らない街で会うのは不思議だ。
でも心休まる。
新しい街で仕事のネットワークを再構築するのは、難しいとは思わないけど、
少しの時間と多大な労力が必要なのだろうと最近、分かりつつある。
でもその労力を遥かに越えた期待感が、僕を高揚させている。

仕事のネットワークはまだぜんぜんだけど、
友人には恵まれている。
場所が変わってもそれは僕の財産だと、あらためて思った。






127 「初仕事おわり」 6月22日


3可間の仕事が終わりました。
昨日は赤坂で撮影後、「料理の鉄人」にも出ていた岸朝子さんの事務所を訪ねる。
岸さんとは平凡社の太陽の撮影で知り合いになり、
その後、いろんな仕事を手伝わせてもらったり、二人で四国や九州に撮影旅行にも出かけた。
ここ数年はお会いする機会もなかったが、突然の訪問にもかかわらず、暖かく出迎えてくれた。
開口一番「あなた、いつ東京に遊びに来たの」
だから、引っ越して来たって言ってるじゃないですか・・・。

その後、すぐ近くにある知り合いのプロダクションにも挨拶。
自宅に帰って車のナンバー変更の書類を作成する。
できれば今週中に新ナンバーを取得したい。

今日は品川の後、神田で撮影。
走り回って、撮影交渉して、何だか、もうすっかり大阪と変わらない日常。
森のような皇居の外周を回り、テレビでよく見る国会議事堂の脇を通過する。
季節柄か、緑が美しい。
東京は木々が多くて、本当に気持ちがいい。
何だか公園の中をドライブしているみたいだ。
でも渋滞はひどい・・。

大阪で仲の良かった堀内カラーの頼氏から久しぶりの電話。
彼も数年前から銀座の堀内にいて、僕の引っ越し案内を受け取って、電話をくれたのだ。
今は店頭にはいなくて、テレビなどのPR用の商品を作っているらしい。
以前彼から、「東京に行かなきゃいけない」、という話を聞いたとき、絶対面白いはずだから行った方がいいって、と僕は言った。
今回、話をしていて、東京は楽しい、と声を弾ませる彼の言葉を聞いて、良かったなぁと思った。
何だかその気持ちもわかる。
また会う約束をして電話を切った。

明日に納品予定の写真を加工中、友人であるナイキの森部氏から電話。
一度、ブックを持って来てほしいと言う。
とりあえずナイキっぽい写真を再セレクトしようと過去の写真を漁るが、よく考えたらそんな写真、これまで撮ったことがなかった(笑
しょうがないのでそれらしいものを選ぶ・・・。
全く関連のない写真を見せられて、困る彼の顔が目に浮かぶ(笑
まあ何はともあれ、会って話をするのは楽しみなので、この際いいか。

仕事も終わって、今夜はやっと落ち着いて眠れそう。
一段落してほっとした。


126 「初仕事」 6月20日


今日、東京に来て初めての取材に行ってきました。
場所は銀座。
撮影内容は関西にいた時と変わらないので、それほど緊張しないものの、
行ったことのない場所に複雑に絡み合う高速道路に乗って向かう、というのはちょっと憂鬱。
混んでるかもしれないし、時間がさっぱりとわからないので2時間半前に出発。
でも30分で着いた・・。
片道15kmほど。
この距離を高速に乗るべきかどうか、迷ったが取材先にも自宅にも辿り着けなさそうなので、とりあえず乗る。

東京の道は複雑だ。
方向感覚は悪くないと思うのだけど、編み目のように張り巡らされた東京の道はかなり覚えにくい。
北に向かっていたのに気がつくと、道は穏やかに曲がって西へと走っている。
F1のシケインのような高速入り口あり、とかトリックが多い。
それから考えると関西はずいぶんと親切な道作りだとあらためて思う。
東京の交通事情を否定的に考えれば、それは際限ない。
でも僕にはそれがとても新鮮なのだ。
混んでいたと思ったら、突然流れ出したり、
クネクネ曲がって、アップダウンを繰り返す。
見るものすべてが目新しくて、渋滞の中、台場やレインボーブリッジなんかを眺めていた。

出口である芝公園に近づくにつれ、目に飛び込んでくる東京タワーの姿が大きくなっていく。
何度も東京に来ているはずなのに、新幹線の車窓以外で見るのは初めてのことだと思う。
高速出口の信号待ちでハンドルに手をかけ、塔を見上げる。
たくさん東京の風景は見てきたはずなのに、その姿は僕が違う場所に来たことをもっとも実感させたものだった。
それほど意識していなかったとはいえ、僕の中ではいちばんシンボリックなものだったのだろう。

撮影はいつも通り、ただベストを尽くすのみ。
辿り着けさえすれば何とかなる(笑
新しい環境だから、とりあえず今回くらいの仕事がちょうどいいかも。
始めからあんまり難しい仕事が来てもちょっと困るのだ。
今日だって現場に着いたら、ほとんど仕事が終わったような気分だったし。
でもまだ続きますです。





125 「パリ似の風景とR25」 6月17日

東京は涼しいです。
風通りの良い家なので、窓辺に座っているとちょっと寒いほど。

まだまだ引っ越し荷物の片づけは終わりそうにありません(というか、終わるのか・・)
とりあえずパソコンを操作できる環境を確保しました。
そこに辿り着くためには、いくつのもクランクを曲がって、カニ歩きをし、
崩れ落ちそうな荷物に最大限注意を払いながら到達するという、一種のアドベンチャーです(泣

でもマック越しの窓から見える風景は、これまで僕が自分の空間として手に入れたものの中では、ベストだろうと思います。
「緑道」と呼ばれる樹木の小道を、人々が犬を散歩させたりしながら、楽しげに歩いている。
手を伸ばせば触れられそうな場所に木があって、見下ろす庭にはあじさいが青く色を添えている。
少し目線を上げれば公園の巨大な木々が壁のようにそびえ立つ。
たぶんイチョウに似た種類の木だと思うのだけど、ヨーロッパにこんな木がたくさんあったように記憶している。

その風景をずっと見えていて思い出すのはパリだ。
三軒茶屋をパリだ、と言った人はいないかもしれないけど、でも街の風景や
突き抜け過ぎない洗練度合いの心地よさ、そして街を愛するローカル意識など、かなりの点で共通しているものがある。
ぼーっと窓の外を眺めていると、僕はどこの国を旅してたっけ、という錯覚に陥りそうになるし、
街を歩いていても新しいものとの出会いが、常に僕を旅気分にさせている。

少なくとも今月いっぱいは引っ越しの整理をしたり、
人に会ったりしながら、時間は過ぎていくのだろうなぁ、と思っていたけど、
今日になって2つほど大阪から仕事の打診があった。
まだ本決まりではないのだけど、でも実際帰るとなってもどうすれば効率がいいのかが、さっぱりわからない。
できれば新幹線や飛行機で移動するのが楽だけど、いざ東京駅や空港までを機材を抱えてどうやって行くのだろう。
東京で暮らしていたなら当たり前にある知識が欠けているので、誰か友人に聞くしかないんだろうなぁ。
でも「そりゃ、車だろ」と普通に言われそう。
確かに運転は大変だけど、機材で手を抜くわけにはいかないし、それがベストなんだろう。

東京での初仕事はまだまだ先にこと、と勝手に思っていたのだけど
突然、来週の月曜日から始まることになりました。
昔、仕事をしたことのある人が僕の上京を聞き付けて、連絡をくれたのだ。
その仕事は「R25」というフリーペーパー。
東京(首都圏?)にしかなくて、あっという間に無くなってしまう人気のフリーペーパーだ。
企画もデザインも優れていて、これがほんとにタダなの?と思うほど内容も充実している。
「R25」という本の存在は知っていたが、それを手にしたのはこのあいだ、僕のために壮行会を開いてくれた時だった。
人を扱っているページが特に良くて、ああ、この本やってみたいなぁ、と思っていたら、
突然、その仕事が舞い込んで来たので正直、ビックリした。
なんだかドラえもんに何かを頼んだ、のび太みたいだ。
ただ今回は4ページほどのお店取材なので、ちょっと思っていたテイストとは違うのだけど、
でも素晴らしくありがたいです。
これを足がかりにそのうち人の写真が撮れればいいな。

来週は仕事をこなし、できるだけたくさんの人と会おうと思っているので
今週中に今ある素材の中からブックを完成させようと思っています。
まだまだアドベンチャーは続きそうです。トホホ。(やっぱり東京でもこの終わり方か・・)





124 「出発」 6月14日


今日引っ越しです。
というか、引っ越しが終わりました。
家の中はがらんとしていて、あぁ、こんなに広かったんだとあらためて思いました。
南側の窓からは四天王寺の五重塔が見える風景です。
自分で庭を持つのは無理だから、住む時はいつも借景になる景色を見つけてから、その近くで家を探していたっけ。
幸運なことに東京の家も緑の小道に沿うようにして建っている、気持ちのよい空間です。

最後の最後までいろんな人に会ってもらいました。
昨日撮影分の写真を納品したあと、実家に寄り、そのまま東京に向かいます。
いつになるかわかりませんが、次の日記は東京からになるのでしょうね。

では行ってきます。
ほんとにたくさんのことを、ありがとうございました。

川田昌宏






123 「最後のビーツギャラリー」 6月7日


RAW現像の合間を縫って日記を書いています。

引っ越しまでちょうど一週間。
うーん、大丈夫かな(笑
それに何かを忘れているような気がする。

今日、若い子にギャラリーにはいつまで来れるかと聞かれ、ふと考える。
今週末の企画展で終わりだ。
自分が撮った月末の企画展を見ることもなく、
あーそーかー、とあらためて思う。
4年近く、ほとんど欠かさなかったビーツギャラリーも今週で最後なのだ。

人生の中で最も密度の高い数年間だったように思う。
出会いの数もすごかったし、ずいぶんと思考も変わった。
ギャラリーがなければ、東京には行かなかった、とは思わないけれど、
今回のように、万感の想いを込めて上京する、という気持ちにはならなかっただろう。
暖かく送りだそうとしてくれている、皆の気持ちがとても嬉しい。
上京までにできるだけたくさんの人に会えればと思う。

現像おわり。




122 「空白のスケジュール」 6月6日


スタジオの引っ越しが終わり、自宅に大量の荷物がやってきました。
身動きがとれません。
荷物をまたいだり、斜めになって廊下を通過したり、とちょっとしたリクリエーションのようです。
マザーPCであるこのパワーマックは今、ネットを繋げられる場所になく、
コピーしたデータをノートに落とし、HPのサーバーにアップするという、ちょっとうんざりの環境です。

4畳半ほどの洋間を事務所がわりにし、段ボール箱に、めり込むようにして仕事をしています。
なんだかコックピットみたいで、素敵な気がしないでもない。
せっかくすべてを箱詰めしたのに、ライトボックスがいるとか、
名刺が見つからなくて連絡が取れないとか、
請求書のパスワードを見失ったりとか、
もう何かするたびに箱をこっちにやったり、あっちにやったり。
絶対にあるはずなのに見つからなくて、シブシブ同じものを買いに行くハメに。
時間とカネの浪費です。

14日が引っ越しで15日以降のスケジュールは真っ白です。
何度、見直してみても、やはり買ったばかりの手帳のようにまっさらです(笑
みんなは「大丈夫、大丈夫だって。君なら何とかなるって」と笑うけれど、その根拠は何なんだっ(笑
これほど予定がないというのは、フリーになって初めての経験だと思う。
でも不思議なほど不安もなくて、まあなんとかやって行けるだろう、とも思う。
自分が本当にしたかったことをすぐには実現できなくても、
関西での仕事がそうであったように、少しずつステップアップしていければ、いいな。

今年の年末になって、引っ越し前を振り返る。
まっさらだった僕のスケジュール帳には、どんな言葉が綴られているのか。
少し楽しみでもあります。

もうすでに100人くらいの人に「頑張れ」と笑顔で声をかけてもらいました。
それは「また明日」という笑顔ではなくて、目をしっかりと見て、握手を交わす、
旅立つ人を見送るという、はっきりとした意志を持った、強い笑顔のように感じられました。
頑張らなきゃな、と思いました。

 

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