800 「借りたままのカメラ」 11月17日


友人に借りたまま、
返せないカメラがあります。

ミノルタ Xー700。

20代初め、プロカメラマンになる、と決めたとき
友人がこれで練習したら、と貸してくれたものであります。



その友人が高校入学の祝いに買ってもらったもので
僕も含めた多くの友人との思い出が、
このカメラで撮影されたものでした。

しばらくして僕は乗っていたオートバイを売却し、
自分のカメラを買ったので、それを返却しようとしましたが
友人は「いいよ、まだ持っていていいから」と。

何となく返すタイミングを失い
カメラは使われないまま、
ずっと自宅に保管していました。



20代も後半になると
みんなそれなりに忙しくなってきます。

生き方が変わり、何が大事かということも変わり、
社会に出て、最も変化を求められた時代であったと思います。

そんな中で彼とちょっとした行き違いがあり、
次第に疎遠になっていきました。

社会に適応してくことの難しさや
そこで生まれる苛立ち、時代に対する反感。

どうして自分を分かってくれないんだ、という
若さゆえの孤立感。



しばらくして僕は実家を離れ、
彼もまた家族と共に新しい街へ越していきました。

それからかなりの年月が経ち、やはりこれは返さないと、と
彼の自宅に電話をしたことがあります。
でも電話は不通になっていました。

携帯電話がまだ一般的でない時代でしたから
それ以外の連絡方法が見つからず、
仲が良かった友人たちにも尋ねてみましたが
やはり自宅の電話番号しか知らないし、
居所もわからない、という話でした。


時折、カメラを取り出しては
裏蓋を開けて、カビがついていないかを確認し、
巻き上げ、シャッターを切ります。

手にかなりの振動が響くものの
カメラらしい威厳のある、良い音です。

いつか返せたら、と
ずっと思っています。







 

799 「レントゲンと座敷わらし」 11月13日


地方ロケがやっと終わりつつあります。
新幹線で行ったり、来たり・・・。

おそらく何千キロかは移動しているのだと思います。
もうさすがにクタクタです。



遠方のロケの大変さのひとつに
重い機材を抱えての移動、ということがあります。

この職業をしている限りは
もうしょうがないかもしれません。

僕もヒジを痛めました・・・。



レントゲン写真。

医者曰く「ええ年やねんから、
いつまでも若もん気分でおらんと
助手に荷物持たせたらエエがな」と、
男カワダ、お叱りを受ける・・・。

しかしながらアシスタントを使えるような仕事も
なかなかないですし、自分で持つしかありませんよね。




また遠方ロケは早朝出発が多く、
飛行機や新幹線を予約しているため
寝坊が絶対にできない、という大変さもあります。

編集者やディレクターが乗り遅れても
カメラマンがいれば最悪、絵は撮れますが
カメラがネボーすると、これは・・・(焦

いや、意外と編集者やディレクターが撮った方が
面白かったりして・・・(焦2


それゆえキンチョーしているので、ネボーは全くない、
と言いたいところでしたが、2年ほど前にありました。

ただそれは出張先の老舗旅館で、
朝食の撮影があったのに、寝坊したというもの。

おそろしく音のデカイ、携帯電話のアラームをセットして
それを枕元に置き、眠りにつきました。

するとその夜、見たのは座敷わらしの夢。
枕元を走り回っています。

朝、アラームが鳴り、携帯電話をつかんで
ボタンを押しても音は一向に鳴り止まず。

よくよく考えれば、この音は電話・・・。
あわてて飛びつくとナカイさんから。
すでに撮影のスタンバイはできていますよ、と。

チョー焦って着替えながら、携帯電話をチェック。
きちんと鳴る設定になっている。
おかし過ぎる・・・。

鳴る設定であったのにもかかわらず
その日は鳴らなかったのだ。




座敷わらしは夢だ、と思っていましたが
考えれば考えるほど、現実と夢との境目が
だんだん分からなくなってきます。

携帯電話のアラームは出張先で必ず使いますが
鳴らなかったのは、あの時の一度だけです。

まあ、わからないことは
いろいろあるもんですね。

ではまた。



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